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森の幼稚園

デンマークに始まり、その後ドイツなどにも広がっていったといわれる「森の幼稚園 icon」。
教育について特に専門的に勉強したことのない僕でも、この幼稚園の存在は日本にいたときから知っていた。
なぜなら、日本に住む僕のデンマーク人の友人が、僕が日本を発つ前に以下のような話をしてくれたからだ。
「私には、ひとつ後悔していることがあります。それは、上の娘を森の幼稚園に通わせることができなかったことです」
彼は17年ほど日本に住み、デンマーク料理よりも日本料理が好きだと公言するほど日本が好きである。
以前は家族とともに日本に住んでいたが、今は東京にひとり暮らし。
その大きな理由が、下の娘さんをデンマークの森の幼稚園に通わせるためだ。
家族を愛する彼が、家族と離れてまで下の娘さんを通わせたかった「森の幼稚園」。
僕は、デンマークに来てからずっとその場所を見てみたいと思っていた。

その機会が突然やってきた。
僕が取っている授業で「Danish Society」という授業がある。
その授業の一環で、各自がテーマを選びプレゼンテーションをすることになった。
同じ授業を取っている他の日本人の学生が、そのテーマに「森の幼稚園」を選び、明日そこへ見学に行くという。
日本で幼稚園の先生をしていたという彼女と一緒ならば、さらに深く知ることができるだろうと考えた僕は、さっそく同行させてもらうことにした。

学校から自転車で20分程度、森のすぐそばのところにその幼稚園はあった。
住所をチェックしながら行かないと気づかないくらいの小さな幼稚園である。
最初、民家かと思ったのだが、奥から聞こえてくる子どもたちの笑い声と、 建物の壁にかかっている多くの小さなリュックサックが目印となった。
僕らが到着したのは午後の2時前。ちょうど子どもたちが森から帰ってきた後だった。
今回の訪問では、森から帰ってきた後の子どもたちのことしか知ることができなかったが、僕が感じたことをいくつか紹介してみたい。

まず、子どもたちがとにかく元気だということ。
幼稚園を訪問した後、僕らも自転車で森を見に行ったのだが、かなり広い。
広大な森を散歩してきた後、よくこれだけ遊べるな、と感心した。
実際、毎日森の中で新鮮な空気を吸い、よく運動しているため、体が丈夫になり、風邪もひきにくいという。
日頃、鍛えられている子どもたちはまだまだ元気が有り余り、そして夜には熟睡するのだろう。
肩こりに苦しみ、体力のない僕とはあまりにも対照的だ。
もうひとつ感じたことは、先生がどっしりと構えていること。
庭にビールかジュースかのケースが多く積み重ねられていて、ふたりの子どもたちがそれによじ登って遊んでいた。
ケースを積み重ねただけだからもちろん不安定であり、横にはテーブルも置いてある。
心配して見ていたら、案の定ケースは崩れ、もう少しでテーブルに頭をぶつけるところだった。
泣き出さなかった子どもたちも立派だが、それに対して、特に手を貸さない先生たちも立派だと思った。
一緒に来ていた友達に聞いても、「日本だったら、幼稚園で子どもが怪我なんかしたら、
親が飛んでくるので、そんな危ない遊びさせられない。」と言っていた。
小さいときからのこのような教育が、自己責任の国デンマークを形成しているのかもしれない。
そして最後に、おやつの時間に感じたこと。
新鮮なフルーツをたくさん食べた後、子どもたちは、デンマークでメジャーなお菓子のひとつ「HARIBO」を先生から与えられた。
ひとつずつ小分けされたそのお菓子を、ひとりの子どもが代表してみんなに配る。
いろいろ味があり、真っ先に自分が取りたかっただろうが、それを我慢して小さな子どもから順番に取らせていた。
自己責任と同時に人に対する思いやりというものも学んでいるのだろう。
短い滞在ではあったが、「森の幼稚園」の一端を垣間見ることができた。
でも、実際に森を一緒に訪問しないとほんとうの意味で理解することはできないだろう。

次回は、先生にお願いして森への散歩に同行させてもらうことにしよう。
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年下の女の子と年下の男の子。なかよく2人で。 ケースによじ登り、遊ぶ子どもたち。この後、崩れてもふたりとも笑顔。 先生の呼びかけにみんながいっせいに集まり、手を洗い出した。
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その後、みんなお楽しみのおやつタイム

翌週、森への散歩に同行させてもらうことができた。
そして、いよいよ子どもたちとの森への散歩が実現。
今日は森を歩きながら、先生からもいろいろな話を聞くことができた。
まず、この幼稚園のことについて書いてみたい。

この幼稚園には、3歳から6歳までの子どもたち20名が在籍している。
この幼稚園の1日のスケジュールは、7:45に開園し、子どもたちが1人2人と集まりだし、
9:30〜10:00頃森へ出発、森の中でランチを食べ、13:30〜14:00頃幼稚園に戻ってくる、という風になっている。
その後、まだまだ元気な子どもたちは外で遊んだり、おやつを食べたりしながら親が迎えに来るのを待つ。閉園時間は15:45。

ここからは、実際の森の中での子どもたちの様子と先生から聞いた話とを合わせて書いていきたい。

9時半過ぎに森を出発。
最初の目的地は、幼稚園から歩いてすぐのところの森の入口の場所。
そこでは、木を使って遊ぶ子ども、日本の「だるまさんがころんだ」に似た遊びを楽しむ子ども、 水溜りに入って遊ぶ子ども、と実にさまざま。
どの子どもも創意工夫をこらし楽しんでいた。
中には、まだ10時前だというのに、お弁当を食べ始める子どもも。
先生いわく、「ランチの時間は決めていません。おなかがすいたときに食べるというのが自然な姿であり、
たとえば、12時になったら、おなかがすいていなくても食べるというのは、不自然だという考え方からです。」とのこと。
日本で、みんなで手を合わせて、「いただきます」と言ってから食べていた自分の幼少のころを重ね合わせ、そのギャップに驚いた。
しばらく遊んだ後、次の場所へ出発。この幼稚園では、森の中の場所にそれぞれ名前を付けており、子どもたちも全員それらを覚えている。
先生から今日の場所の名前を聞いて、また子どもたちは駆け出した。
僕が後ろからその様子を眺めていると、森の深くなる手前の入口のところで子どもたちはストップ。
これは、ある一定の場所まで行くと、遅い子どもを待つように約束がされているとのこと。
こういうことから、社会のルールみたいなものを知らず知らずのうちに学んでいるのだろうなと感じた。
その入口のところで、先生がそこに生えていた植物についての説明。
そして、おもむろに先生も子どもたちもその葉っぱを食べ始めた。
五感をフルに使って森を楽しんでいる。

その後、さらに森の奥深くへ。
地面の大部分が影に覆われ、気温が急に下がったその場所でふたたび立ち止まり、
先生たちと一部の子どもたちはランチタイム、他の子どもたちはまた遊び始めた。
ここは先ほどの場所とは違い、森の深い場所なので、倒木や谷間のような場所もあり、
危険も多いのだが、ここでも先生は特に手を貸すこともなく、その様子を見守るだけ。
思わず、僕が手を出してしまいそうになる。
何もせずに、黙って見ていることが実は一番難しいことなのかもしれない。
このあたりの日本の幼稚園の考え方、つまり、日本では子どもが仮に幼稚園で怪我などすると、
親が幼稚園に文句を言いにくることもある、というようなことを話すと、先生は、
「もちろん、子どもがケガをしたりすると、親が幼稚園に来るわ。でも、事情を説明すると、
たいていわかってくれるし、私はこの幼稚園に8年勤めているけど、子どもが大きなケガをしたことは1度しかないわ。
子どもたちは、自然の中で、何が危ないかなどということを自分の経験の中で学んでいっているのだと思う。」と言っていた。
先生のみならず親も我慢強くなければならないし、そして、ある意味、子どもの持つ力を信用しているのだろう。
「森の幼稚園」は、大変人気があり、常に何人もの園児が順番を待っているとのこと。
「デンマークには多くの森があり、このあたりにも同様にいっぱいあるのに、どうしてヘルシンオアには、
ここしかないのか私にもわからないわ。」と笑いながら、先生は語ってくれた。
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仲良くふたりで木を運んでいるところ。何をして遊ぶのだろう? 顔を泥だらけにして遊んでいる女の子。この後、大きい石を踏み台にしたり、いろいろ実験しながら遊んでいた。 男の子も女の子も仲良く倒木で、遊んでいる様子
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先生の説明を熱心に聞く子どもたち。この後、葉っぱを食べていた。 森の深い場所にて 幼稚園への帰り道。5月のデンマークの森はほんとうに美しい。
デンマークには、実に多くの森がある。
このことが「森の幼稚園」を実現することができたひとつの大きな理由かもしれない。
緑の少ない日本の都会において、このような幼稚園を実現することは不可能だろう。
ただ、ここでの考え方はなにか参考にすることができないだろうか。
先進国の中で唯一出生率の増加に成功したといわれる国デンマークの地にて、
出生率低下に悩む日本のことを思いながら、そんなことを考えていた。
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